東京高等裁判所 昭和25年(行ナ)24号 判決
原告 竹内金太郎
被告 武田薬品工業株式会社
一、主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は、原告の負担とする。
二、事 実
原告訴訟代理人は、本件口頭弁論期日に出頭しないから、当裁判所は、その提出した訴状を陳述したものとみなして相手方に弁論を命じた。右訴状によれば、原告は、特許庁が、昭和二十五年十月七日原被告間の昭和二十三年抗告審判第二八六号事件についてした審決を取り消す。訴訟費用は、被告の負担とするとの判決を求め、その請求の理由として、原告は登録第三四三〇九九号商標を有するものであるが、被告は右商標は、被告の有する登録第二二一一四九号商標と類似し、商品の誤認又は混同を生じしめる虞があると主張して右商標の登録の無効審判を請求した。原告は極力その然らざる所以を主張して爭つたが、特許庁は、昭和二十三年九月二十四日及び昭和二十五年十月七日それぞれ審判及び抗告審判において、右被告の主張を認容する旨の審決をなした。
しかしながら、商標の類否の判別は、その形態的対比ばかりでなく、音感上の対比をも考慮すべく、又商品の誤認混同を生じしめるか否かは、市場の実情について決定しなければならないのに、右抗告審判の審決は、この点を看過してなされたもので、違法であると主張し、その取消を求めている。
被告訴訟代理人は、本件審判を破棄する。本件を特許庁に差し戻すとの判決を求め、答弁として、登録第三四三〇九九号商標について、原告の主張するような登録無効審判の手続が特許庁において為されたことは爭わない。しかし右商標は、その後昭和二十六年二月二十一日被告に移転され同年五月八日その登録を了したものであるから、原被告間に爭は無くなり、しかも、右手続は、審決の未確定中になされたものであるから、審決は破棄され、本件は特許庁に差し戻されるべきものであると思料すると述べた。(立証省略)
三、理 由
当裁判所が真正に成立したものと認める乙第一号証(商標原簿謄本)によれば、本件において問題となつている登録第三四三〇九九号商標は、当初原告の有するところであつたが、その後被告の主張する如く、昭和二十六年二月二十一日被告に移転され、同年五月八日その登録を了し、現に原告の権利に属せないものであることが明瞭である。
して見れば、原告は本訴を提起して、特許庁が抗告審判においてなした審決を取り消すことについて、何等法律上の利益を有しないものであるから、本訴請求に付いては、進んで審決の当否についての審理判断をなすことなく、棄却せられるべきものである。
よつて訴訟費用の負担について、民事訴訟法第九十五条、第八十九条を適用して主文の通り判決した。
(裁判官 中島登喜治 薄根正男 原増司)